近代漆器塗装職⼈ 荒家義治
近代漆器という“製品”へのこだわりと技術を後世に伝えゆく
エアスプレーでウレタン塗料を均一に拭きかけ、むらのない光沢を次々と生み出していく。お椀であれば、内側と外側それぞれに塗布する時間は1個あたり数秒ほど。一瞬の出来事だが、塗料に凹凸がないか、どの角度から見ても同じ光沢があるか、ほこりや塵など異物がついていないかなど、塗布後に確認することは多い。完璧な仕事ができたときにほっと安堵するのは、何年仕事をしていても変わらない。
父の塗装会社を継いで2代目の荒家さんは、これまで複数の弟子を迎え入れ、技術を伝えてきた。自身を「近代漆器職人であり、企業人でありたい」という。
「作品ではなく製品を作っている。自分のためではなく、お客様のために使いやすくキレイな器をお届けするという思いが大事です」
手掛ける製品は、お椀や重箱、業務用の蓋物容器など形状も多岐にわたる。塗料の量を調節しながら、複雑な形の器を同じ薄さに塗るのには高い技術が必要だ。
「事業として近代漆器が続いていくように、自分が持っているノウハウはすべて、あとに続く若者たちに伝えたい。経営しながら弟子をつけるのは大変ですが、それが自分の使命だと思っています」
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ひとつひとつ手作業で丁寧に塗装する。他の樹脂製品にはない美しい仕上げが山中の特徴
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エアスプレーの操作で塗料の量を調節。出しすぎず絞りすぎず、絶妙なコントロールが求められる
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お椀の外側を塗布したら乾燥機へ。45分ほど入れてしっかり乾燥させてから内側を塗装、再び乾燥機に入れる
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上ぶちにアクセントを施す。素早い手つきで器を回転させ、一つひとつ手作業で進めていく
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塗りあがったばかりの器。細かい埃やムラがないように細心の注意を払う
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作業の合間にほっと一息。近代漆器職人の荒家さんご夫婦とスタッフ、現在修行中の息子さんの4名が一緒に働いている