人と技|製作工程THE TRADITIONAL OF A YAMANAKA

Yamanaka Craftsman製作工程

漆器は、分業によってつくられます。漆器屋(問屋)がデザインを決めると、木地師が木地を挽き、下地工程を経て、下塗り、中塗り、上塗りと漆を塗り重ね、蒔絵を加えて完成します。伝統的な木製漆器、戦後から発展した近代漆器それぞれの製作工程をご紹介します。

木製漆器

こちらで紹介する下地・上塗りの工程を経る真塗りのほか、山中塗には「拭き漆」仕上という特徴的な技法があります。布に漆を染み込ませ、木地を何度も拭いて漆をすり込んでいく方法で、漆の艶が木肌の繊細な美しさを際立たせます。

木地挽き

原木を縦木取り(たてきどり)して寸法を決め、余分な部分を切り落とします。ろくろ挽きで大まかな仕上がりの形状を作ったのち、木地に歪みが出ないように約3カ月間かけて乾燥させます。木は乾燥や湿度により膨張したり収縮したりと動くので、仕上がりの寸法より3㎜ほど大きめに削るのがポイントです。木がほとんど動かない状態になってから、外側、内側の順番に仕上げ挽きを行います。加飾挽きはここで加えます。

木地固め

乾燥した木地の木目に漆を染み込ませて木地繊維を固め、変形を防ぎます。傷みやすい天縁や高台縁、見付け部分に糊漆で布を張り補強します。乾燥後に布の重なり部分などを刃物で落とし、木地の表面を平らにするためにサンドペーパーなどで研ぎます。
糊漆とけやきの粉を練り合わせたものをひのきへらで木地につけ、乾燥させてから木地表面を研ぎます。その後、粉と漆を練り合わせた二辺地をつけて乾燥させて研ぎ、さらに細かい粉と漆を練り合わせた三辺地でも同様の手順で行います。
その後、砥の粉を生漆でよく練った錆地をひのきへらで全体に薄くつけ、全体の平滑になるよう砥石などで水研ぎし拭き取ります。10種を超えるひのきへらを用いながら、きめが整うまでこの作業を繰り返します。

塗り

薄く下塗りし研いだ後、精製漆を刷毛で全面に薄く塗布し、表面を平らにします。硬化させた後、上塗り漆の密着をよくするために駿河炭などを用いて研ぎます。
山中塗は、塗ったまま研磨せずに仕上げる「塗立(ぬりたて)」という手法を用います。ほこりや塗りむら・刷毛むらにないよう気をつけながら、刷毛で上塗り漆を均等の薄さに塗り、自動的に回転する風呂棚に入れてゆっくり硬化させます。

蒔絵

美濃紙に書いた下絵を焼漆、石黄でなぞり、それを漆器の表面に写し取ります。漆で文様や文字などを描き、固まらないうちに金や銀などの金属粉や色粉を蒔いて、表面に定着させます。その後、漆で塗り固めて丁寧に磨き上げます。
蒔絵にはさまざまな技法があります。「平蒔絵」は、下地(漆を塗った木地)に漆で絵を描いてから、そこに金銀粉を蒔き、硬化させたあと蒔絵だけに透明な漆を塗って固定させます。「研ぎ出し蒔絵」は、粉を蒔いたあと全体に色漆を塗り、木炭や砥石などで蒔絵が現れるまで研磨します。山中塗では立体感のある「高蒔絵」が有名です。

近代漆器

近代漆器とは、主原料にプラスチック(樹脂)を使用した製品です。木だけでは実現できない合理性や耐久性、メンテナンスの容易さに加え、形状や色彩の自由度などを最大限に活かし、さまざまなインテリア空間で活躍しています。現在では学校給食用の食器としても採用されています。

成形

金型という金属塊を形取り、その金型で樹脂を成型します。金型のデザインが製品の形状を決めるので高い創造性が求められます。高温での作業によって不純物が取り除かれ、低コストで大量生産が可能に。成形技術のレベルの高さが、近代漆器の成長を支えています。

塗装

素地が成形されたら、塗装によりさまざまな色に塗られていきます。技術の進歩により色彩の自由度が広がり、木製のテクスチャーに近づけた加工も可能になりました。
素地に化学塗料をエアスプレーで塗布し、100度で30~60分間、熱風乾燥をします。塗りの職人によって一つひとつ丁寧に塗装して仕上げられます。

蒔絵

塗装された商品に蒔絵(印刷)を加え、用途に応じたデザインに仕上げていきます。シルクスクリーン印刷を中心に行いますが、金銀粉や色粉を用いて色のグラデーションを表現したり、立体感の出る盛絵を施したりと、手作業による繊細な表現も可能となります。デザインを分版出力し、1版ずつ多色刷りを重ね金粉をふるなど、蒔絵の技法も取り入れています。

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